記事作成日:2024年9月25日
エムポックスウイルス(サル痘)とは?現状の問題点と日本での備え
エムポックスウイルス(以前は「サル痘」と呼ばれていました)は、1970年に現在のコンゴ民主共和国で初めてヒトに感染が確認された病気です。
日本でも感染が確認されており、今後は適切な対応が求められています。
そこで今回は、エムポックスウイルスについて解説します。
エムポックスウイルスとは?具体的な症状
エムポックスウイルスは、人類が初めて根絶したといわれる天然痘ウイルスと同じ系統に属しており、伝染力・罹患率・致命率の高いウイルス感染症として古くから知られています。
1958年に研究用のサルから初めて発見されたことから「サル痘」と名付けられましたが、感染源はサルに限らず、ネズミやリスといった齧歯類が主要な宿主とされています。
2022年以降、世界的な感染拡大が見られ、「エムポックス」という新しい呼称に改められました。
エムポックスウイルスに感染すると、発熱、筋肉痛、頭痛、倦怠感といったインフルエンザ様の初期症状が現れます。
その後、数日以内に発疹が顔や四肢、体全体に広がり、膿疱やかさぶたを伴います。発疹が全身に広がる前にはリンパ節の腫れが特徴的で、天然痘とは異なる点です。
病変が痛みを伴い、重症化するケースでは呼吸器症状や神経症状も見られるケースも報告されています。
エムポックスウイルスの感染経路
エムポックスウイルスは、人と人、または動物から人へ感染することがあります。
感染経路は主にウイルスを含む体液や病変部分に直接触れることによる接触感染、または飛沫感染です。
また、感染した動物との接触や、ウイルスが存在する環境を通じて感染することもあります。
エムポックスは天然痘よりも感染力は低いものの、皮膚の病変が伝染力を持つため、注意が必要です。
なお、潜伏期間は5日から21日とされており、感染が確認された場合は早急な隔離措置を受けることになります。
エムポックスウイルス2022年以降の感染拡大
写真:国立感染症研究所ホームページより引用
2022年初頭、エムポックスウイルスの大規模な感染拡大が複数の国で確認されました。
このウイルスは西アフリカや中央アフリカの特定の地域で風土病として存在していましたが、欧米を中心に急速に感染が広がり、WHO(世界保健機関)は2022年7月に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」として宣言しました。
感染拡大の要因には旅行や感染者との接触が挙げられています。
エムポックスの流行は一時的に収束する傾向が見られるものの、再流行の可能性が懸念されています。
ウイルスが特定の国や地域で根付いてしまうと、国境を越えた感染が再度発生するリスクがあります。
また、感染者が無症状である場合でも、潜在的な感染源となることがあるため、ウイルスの完全な封じ込めにはさらなる監視が必要です。
日本におけるエムポックスの現状
日本国内では、エムポックスの感染事例が報告されていますが、発生頻度は他国と比べて少ないです。
しかし、国際的な移動が活発な状況下では、感染者が海外から持ち込むリスクが高く、特に空港や観光地などでの感染拡大が懸念されます。
日本は島国であるため、国内感染拡大のリスクは一見低いように思われがちですが、感染経路を遮断するための入国時の水際対策が依然として重要です。
日本におけるエムポックスウイルス感染症対策と課題
日本国内では、新型コロナウイルス感染症の経験から、感染症対策の体制はある程度整備されていますが、エムポックスに対する認知度や啓発活動は十分ではありません。
多くの国民がエムポックスウイルスについての情報を十分に理解しておらず、症状や予防策に対する意識が低いという問題があります。
さらに、エムポックスは一度収束しても再流行の可能性があるため、長期的な監視体制の強化が必要です。
エムポックスウイルスに対して、天然痘ワクチンが有効であることが確認されています。
日本では、天然痘ワクチンの在庫を保持しているものの、エムポックス用として接種が推奨されているわけではありません。
エムポックス専用のワクチン開発や、治療薬の確立も今後の重要な課題となります。
特に、感染リスクの高い職業に従事する人々や医療従事者に対する優先的なワクチン接種が検討されています。
エムポックスウイルス感染症における日本の医療体制
エムポックスの感染拡大を防ぐためには、迅速かつ効果的な医療対応が求められます。
日本では、新型コロナウイルス感染症対策を通じて、感染症対策の経験が蓄積されていますが、エムポックスに特化した医療体制の整備も急務です。
早期診断や感染者の隔離対応を確実に行うために、医療機関への指導や医療従事者の教育も進めらる必要があるでしょう。
今、私たちができる感染症予防対策
エムポックスウイルスの感染予防には、日常生活での基本的な衛生習慣が重要です。
まず、手洗いを徹底することが最も効果的な予防策の一つです。
特に外出後や食事前、トイレの後は石けんと流水でしっかりと手を洗い、ウイルスや細菌の除去を心がけましょう。
また、人との接触に注意することも大切です。
感染者の体液や皮膚の病変に直接触れることが感染の主な原因となるため、不特定多数の人と接触する機会が多い場面では、手袋やマスクの着用を検討しましょう。
さらに、感染が疑われる場合や症状が出た場合は、すぐに医療機関に相談し、診断と適切な対応を受けることが重要です。
特に、発熱やリンパ節の腫れ、発疹が見られる場合はエムポックスの可能性がありますので、自己判断で外出せず、他者への感染拡大を防ぐためにも隔離を徹底しましょう。
最後に、ワクチン接種が有効な予防策として考えられています。
天然痘ワクチンがエムポックスにも効果があるため、必要に応じてワクチン接種を受けることを検討してください。
感染リスクを減らすために、日常の衛生管理と予防行動を徹底することが、私たちができる最大の対策です。
監修
あなぶきヘルスケア
事業部長 喜田 康生
平成17年にプランドゥ穴吹に入社。その後、地域の医療介護検索サイト「病院・介護ナビmilmil」を立ち上げ、サイト営業で多数の病院、クリニック、介護施設などを訪問。
現在はあなぶきヘルスケアにて、広告コンサルティングを通じ、ブランディングなど幅広い視点から医療介護業界をサポート。