記事作成日:2024年5月28日
自主回収された「紅麹」とはどういうもの?効果と問題点について
最近、小林製薬の「紅麹(べにこうじ)」を含む健康食品を摂取した人々が、急性腎不全などの健康被害を報告し、いくつかの死亡事例が発生しています。
これに対し、小林製薬は紅麹サプリメントの自主回収を進めていることが世間で話題となりました。
そこで今回は、自主回収された「紅麹」について、効果と問題点を解説します。
紅麹とはそもそもどういうもの?
紅麹は、「米や麦などの穀物に、カビの一種である『紅麹菌』を混ぜて発酵させたもの」です。台湾や中国では「紅酒」や「紅乳腐」の原料や食品の着色料として使われ、沖縄県の「豆腐よう」にも使われています。紅麹を作るには、まず「種麹」と「製麹」の2つの段階を経ます。
【種麹の作成】
- うるち米を18時間水に浸す。
- 胞子を無菌的に接種し、32度で7日間培養して胞子を十分に成長させる。
- 無菌的に炊飯米と水を混ぜ、32度で7日間培養して「種麹」を作る。
【製麹の作成】
- うるち米を18時間水に浸し、60分蒸し煮する。
- 蒸した米を麹窯に入れ、種麹を6%添加した後、32度で製麹する。
- 発酵により温度が上昇するので、手入れして38度以下に下げ、水分を補給しながら6~7日間発酵させる。
紅麹の製造は非常に手間暇がかかり、特に温度と水分の管理が重要です。しかしこの手間暇がかかった工程から、食品としての安全性が高く、健康効果も期待できるサプリメントとしても利用されています。
紅麹で得られる効果
紅麹の効果について注目されるのは、主にコレステロールに対する影響です。
一部の脂質異常症の治療に使われる「スタチン系製剤」という薬は、肝臓でのコレステロールの生成を抑える効果があります。紅麹に含まれる「モナコリンA」は、このスタチン系製剤と同じ働きをすることがわかりました。実際、紅麹に含まれるモナコリンAの量は、日々の摂取量に換算すると、処方薬のロバスタチンと同程度の効果があるかもしれません。
このため、紅麹は「天然のスタチン製剤」として注目されています。また、臨床試験でも良好な成績が報告されています。例えば、中国の被験者を対象とした紅麹サプリメントの試験では、心臓疾患の発症率が減少し、コレステロールも効果的に低下しました。
しかし、紅麹の効果は基本的に医薬品と同様であり、医師の指導のもとで使用すべきです。
問題視される紅麹の危険性
紅麹で問題視されている危険性については、以下のことから挙げられます。
- 麹の「変質のリスク」
- 紅麹の副作用に気づきにくい
それぞれについて解説します。
麹の「変質のリスク」
麹菌は、味噌や醤油、日本酒などの製造に欠かせない微生物で、伝統的な発酵食品に広く利用されています。その中でも、紅麹菌は赤い色素を生産する特定の麹菌の一種です。紅麹菌にはいくつかの種類がありますが、食品に使われる主なものは「Monascus purpureus(モナスカス プレプレウス)」や「Monascus anka(モナスカス アンカ)」です。
しかし、麹菌は微生物であり、「変質のリスク」があります。微生物の中には有用なものもあれば病原性のものもあり、微生物の変異は稀ではありません。実際、今回の事故では、青カビ由来の「プベルル酸」という物質が予期せず生産された可能性があります。これが起こりうるのが麹や発酵食品の世界です。
紅麹の副作用に気づきにくい
紅麹はサプリメントとして利用されることもありますが、その成分は薬と同様です。したがって、過剰摂取や長期間の使用による副作用のリスクがあります。しかし、一般的にサプリメントは薬とは違うと認識されがちであり、そのため過剰摂取の可能性が高まります。サプリメントであっても、リスクが完全に排除されるわけではないことに注意が必要です。
自主回収された「紅麹」による健康被害
消費者庁は、およそ6800件の機能性表示食品について、医療従事者から事業者に寄せられた健康被害の情報を収集し、専門家が詳細に分析した結果を公表しました。
その結果、健康被害に関する情報は31製品で82件ありました。そのうち、製品の摂取と健康被害の因果関係が否定できないとされるのは、小林製薬の「紅麹コレステヘルプ」を含む16製品の21件でした。
その中で、重篤な症状が報告されたのは1件で、70代の男性が去年5月にサプリメントを摂取した後、急性肝炎にかかったという報告があります。また、82件の健康被害に関連する報告のうち、サプリメント形状の製品が75件で、全体の9割以上を占めていたことも分かりました。
小林製薬「使用中止のお願い」
小林製薬は、紅麹を含む健康食品に関して、「紅麹関連製品の使用を中止して回収する」というお知らせを発表しました。
小林製薬の紅麹を含む健康食品が、自主的に回収されています。
引用:消費者庁
これらの製品を購入した方は、直ちに摂取を中止してください。
また、異常が感じられる場合だけでなく、何らかの不安がある場合も、医療機関や保健所に相談してください。
まとめ
「ベニコウジ色素」は、一応安全性が確認されています。厚生労働省によって食品添加物として承認されてから、この十数年間で、安全性に関する問題が報告されたことはありません。ただし、「食品だから安全」というわけではなく、「添加物だから危険」ということでもありません。当たり前のことですが、口に入れるものは安全性が重要です。安全性を確保することは容易なことではありません。自分の体とよく相談しながら、口に入れるものには慎重に選ぶべきです。
監修
あなぶきヘルスケア
事業部長 喜田 康生
平成17年にプランドゥ穴吹に入社。その後、地域の医療介護検索サイト「病院・介護ナビmilmil」を立ち上げ、サイト営業で多数の病院、クリニック、介護施設などを訪問。
現在はあなぶきヘルスケアにて、広告コンサルティングを通じ、ブランディングなど幅広い視点から医療介護業界をサポート。