記事作成日:2023年2月22日
まだまだ油断できない食中毒!ノロウイルスについて
通年で感染する可能性のあるノロウイルスですが、特に寒い時期となる11月~1月頃をピークに多くの人が感染しています。
しかし、岡山県では2月に入った現在も「食中毒注意報」の継続を呼びかけています。
今回は、ノロウイルスの予防法や注意点などについて解説します。
【ノロウイルス】昨年12月に発令した食中毒注意報
岡山県では、今季はノロウイルスによる食中毒が多発する恐れがあるとして、昨年12月から【食中毒注意報】を発令しています。
岡山県庁によると、感染症発生動向調査によって感染症胃腸炎の届出件数が2週間連続で対前週比1.1倍以上に増加したとし、注意報を発令するに至ったとしています。
岡山県庁:食中毒(ノロウイルス)注意報を発令しました!
ノロウイルスの主な症状
ノロウイルスの主な症状としては【吐き気・嘔吐・下痢】です。高熱にならないことが多く、血便などもありません。
感染から症状を発症するまでに潜伏期間があり、平均24~48時間と短期間であることが分かります。
また、子どもがノロウイルスによる食中毒になってしまった場合、ひどいケースで嘔吐や下痢が1日に10回以上になることも。
まれに、嘔吐物が喉に詰まってしまい、窒息してしまう恐れもあるので注意が必要です。
ノロウイルスに感染する原因
公益社団法人日本食品衛生協会によると、【加熱不十分な2枚貝の喫食による場合が2割、調理する人の手指などを介して、ノロウイルスが食品についたことが原因となる場合が8割程度】と発表しています。
しかし、ノロウイルスに汚染された2枚貝であっても、十分に加熱すれば問題なく食べられます。
実は、食中毒事例のうち7割程度は原因となる食品が特定できていないのが現状。
ノロウイルスに感染した食品または食品取扱者を介して汚染されてしまうことが多くの原因となっているため、特定が難しいとされているのです。
ノロウイルスの検査方法
ノロウイルスの検査には、さまざまな方法があります。
■遺伝子検査
高感度で特異性が高く、糞便・嘔吐物・食品中のノロウイルス検出に用いられます。検査の結果は即日~1週間程度で判定されます。※機関によって異なる
■抗原反応検査
抗原反応検査の場合は、遺伝子検査に比べると約70%の感度となりますが、偽陽性が少ないのが特徴。約15分程で判定結果がでます。
■電子顕微鏡観察
電子顕微鏡を用いて糞便中のウィルス粒子を直接検出する方法です。しかし、現在は遺伝子検査や抗原反応検査が主流となり、電子顕微鏡はほとんど用いられていません。
ノロウイルスを治療する方法
残念ながら、ノロウイルスに効果のある薬はありません。
ノロウイルスは症状が持続する期間が短いため、一般的には対症療法が行われます。脱水症状が出たり体力を消耗したりしないよう、水分や栄養をしっかり補給します。(必要があれば点滴)
抗生物質は効果がなく、下痢の期間を長引かせてしまう可能性があります。下痢止めを飲むと回復が遅れることがあるので、推奨はされていません。(長引く場合は、体力消耗を防ぐために処方してもらえるケースもあります)
ノロウイルスを予防するポイント
ノロウイルスには有効的な薬もなければ、ワクチンもありません。
特に、免疫が不十分な子どもや高齢者は簡単に感染してしまうのが怖いところ。
ノロウイルスを予防するために、以下のポイントを意識しましょう。
1.食品や調理器具からの二次感染を防ぐ
調理の際、手を洗うのはもちろん、調理器具にも気を使いましょう。
食品を取り扱うお仕事の人は、日頃から自分自身の健康状態を把握しておくことが大切。
嘔吐や下痢、風邪のような症状があれば、責任者などにそのことをきちんと伝えましょう。
そして責任者は、食品を直接取り扱う作業に従事させないように配慮しましょう。
家族に感染者がいる場合、家庭で食事をした際には、使用した食器を次亜塩素酸ナトリウム液や亜塩素酸水に十分浸し、消毒します。
また、厚生労働省では以下のように呼びかけています。
調理器具等は洗剤などを使用し十分に洗浄した後、次亜塩素酸ナトリウム※(塩素濃度約200 ppm)や亜塩素酸水(遊離塩素濃度25 ppm(含量 亜塩素酸として0.05%≒500 ppm以上))で浸すように拭くことでウイルスを失活化できます。
また、まな板、包丁、へら、食器、ふきん、タオル等は亜塩素酸水(遊離塩素濃度25 ppm(含量 亜塩素酸として0.05%≒500 ppm以上))による浸漬や、熱湯(85℃以上)で1分以上の加熱が有効です。
なお、二枚貝などを取り扱うときは、専用の調理器具(まな板、包丁等)を使用するか、調理器具を使用の度に洗浄する、消毒する等の対策により、他の食材への二次汚染を防止するよう、特に注意するよう気をつけましょう。
※家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用できます。
2.食べ物はしっかり加熱して食べる
一般的にウイルスは熱に弱いと言われています。
加熱処理をすると、ウイルスの活動を止めることができます。
ノロウイルスに感染する可能性の高い2枚貝などの場合は、中心部が85℃~90℃で90秒以上の加熱を心掛けましょう。
3.嘔吐物などの処理は厳重に・速やかに行う
嘔吐物や下痢便などは、放置すると感染が広がっていく可能性があるため、速やかに処理するようにしましょう。
処理をする前に、周囲に人がいる場合は遠ざけるように促してください。
処理の際にチリやホコリと一緒に飛散し、それを吸い込むと感染してしまう恐れがあります。
処理する人は、しっかりと使い捨てのエプロン・手袋・マスクを着用し、汚物からウイルスを飛散させないように静かに拭き取りましょう。
拭き取った後は、次亜塩素酸ナトリウムで床を浸すようにし、その後しっかりと水ぶきしてください。
過去には、12日以上前にノロウイルスに汚染されたカーペットを通じて、二次感染が起こってしまったことも。
時間が経っても汚染された床や手袋などには、感染力のあるウイルスが残っている可能性があるため、感染源となるものは必ず処理する必要があります。
また、ノロウイルスは乾燥すると容易に空中に漂い、これが口に入って感染することもあります。
処理後はウイルスが屋外に出て行くよう、十分に喚気を行いましょう。
4.しっかり手洗いする
どんなウイルス感染予防においても、手洗いはとても重要です。
・外出先からの帰宅後
・ 調理を行う前
・食事の前
・トイレに行った後
・ご家族や患者の汚物処理やオムツ交換
汚物処理の際は手袋をしていたとしても必ず手を洗いましょう。
爪は短く切っておくのがベスト。手洗いは指輪等をはずしてから行うのが基本です。
石けんを十分泡立て、ブラシなどを使用して手指を洗浄します。
すすぎは温水による流水で十分に行い、清潔なタオル又はペーパータオルで拭きましょう。
実は、石けん自体にノロウイルスを死滅させる効果はありませんが、手のあぶら等の汚れを落とすことにより、ウイルスを手から剥がれやすくする効果が期待できます。
家族全員で徹底して手洗いを行うようにしてください。
自らの予防が、まん延予防対策にもなることを意識しておきましょう。
ノロウイルス感染を予防して健やかな毎日を
今後も、岡山県のみならず日本全国でノロウイルスの感染による食中毒は続きます。
特に、集団生活を行う子どもや、施設で過ごす高齢者の方は注意が必要です。
できる予防はしっかりと行い、健やかな毎日を過ごせるよう、引き続き気を付けて過ごしましょう。
【ノロウイルス】おすすめの関連施設
■医療法人社団らく楽会 太田クリニック(高松市)
■永井循環器内科医院(坂出市)
■前田メディカルクリニック(高知県)
■やまじクリニック(岡山県)
監修
あなぶきヘルスケア
事業部長 喜田 康生
平成17年にプランドゥ穴吹に入社。その後、地域の医療介護検索サイト「病院・介護ナビmilmil」を立ち上げ、サイト営業で多数の病院、クリニック、介護施設などを訪問。現在はあなぶきヘルスケアにて、広告コンサルティングを通じ、ブランディングなど幅広い視点から医療介護業界をサポート。